教習所で免許を取得しよう

教習所で免許を取得しよう

自動車教習所で出会った謎のおじさん

若い時は車を運転することに興味がなく、教習所が近所にありながら通う気が全くありませんでした。 車は乗せてもらうもので自分で運転するものじゃないと、運動神経の鈍い私はそう思っていました。

けれども、結婚し子供ができたら車が無いとどこにも行けず、やっぱり必要なんだと分かったのです。 そこで、30歳を目前にして自動車教習所に通う事になりました。 子供を保育園に預け、迎えに来てもらって教習所に通うのは、久しぶりに「勉強」する事なのでワクワクしました。

勉強することはどちらかと言えば苦手なのですが、近所のママ友とは違う仲間と一緒に過ごすのは、学生時代を思い出してその時だけは独身気分になれたのです。 高校卒業を控えた学生さんたちの他、定年過ぎて孫のために免許を取ろうと頑張っているおじいちゃんや、私のように若い時に取らなかった主婦もいました。

そして、一番私が興味を持った教習生は、実技が抜群にうまくてスピードもついうっかり出し過ぎてしまう中年の男性でした。 その人はなぜかいつも黒塗りの車の後部座席に乗って通って来ていたのですが、運転している人は明らかに堅気の人ではありませんでした。 教習を受けている人は普通のおじさんなのですが、その送迎してくれるお兄さんは「いかにも」と言った感じなので、私や私と同時期に教習を受けていた人たちはみな「何者?」と噂し合っていました。

噂されているのを知っていたのかもしれませんが、私達とは普通に会話して冗談も言ったりして楽しいおじさんだったのです。 会話の中で、一度免許を失効させてしまったと言う事を聞き、それで運転が上手いんだと納得しました。 卒検の時もそのおじさんは何の問題もなく合格し、落ちてしまった私を慰めてくれたのです。

しかし、その後合格した私が学科試験に行った時、そのおじさんと再び会う事になりました。 私よりもかなり早く学科を受けたはずだと思っていましたが、話を聞いたら落ちてばかりいてまだ合格しないと言うのでびっくりしたのです。

一緒に試験を受け、幸いなことに二人とも合格し良かったのですが、おめでとうを言おうとそのおじさんの方へ向かったところ、そこにはいつもの黒塗り送迎車と運転手さん以外に強面のお兄さんたちが3人も並んでいたので、私は会釈だけしてとっとと帰りました。